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LIDOMA -建築士が作る間取りの教科書-

【確認申請に必要な図面の全て 4号建築物編】

一戸建ての住宅をはじめ、
集合住宅やオフィスビル、テナントビルといった建築物は、
建築基準法という法律でその内容が定められています。

そしてこれらの建築物は、着工前に、
建築基準法に則った内容に適合しているかどうか、
建築確認申請という手続きにて中身を確認していくのです。

しかし、この確認申請はとても専門的な内容になっています。
用途によって、内容や必要な図面が異なってくるのです。

これから家を建てようと思っている方や、
初めて確認申請書類を作成しようと思っている設計者には、
ややこしく感じる部分も多くあるのが現状です。

そこで本記事では、建築物の中でも一番数の多い、
木造一戸建ての住宅の確認申請手続き(4号建築物)について、
提出が必要な申請書類や申請図面の種類を解説していきます。

確認申請に必要な図面だけを調べていると、事前協議や消防同意のことを見落としがちです。
そこで本記事ではそういった内容についても解説しますので、
一つ一つ順序を追って確認していきましょう。

具体的な申請書類の書き方については、
下記リンク先の記事を参考にしてみてください。

建築基準法による一戸建て住宅の扱い

平屋の外観

まずはじめに、一戸建ての住宅は建築基準法上、
どういった扱いになるのかを確認しておきましょう。

建築基準法では第6条の法文にて、
確認申請が必要である旨が記載されています。

その中には、建築物を1号から4号まで、
4つの分類に分けているのですが、
一戸建ての住宅についてはこのうち4号建築物に分類されます。

ただ、一戸建て住宅であればなんでもOKかといえば、そうではありません

この4号建築物の種類は、
建築基準法により下記のように定義されております。

1号建築物…特殊建築物(建築基準法別表第1(い)欄の用途のもの)かつ 床面積>100m²

2号建築物…木造かつ 階数≧3 延面積>500m² H>13m 軒H>9m のどれかにあてはまるもの

3号建築物…木造以外かつ 階数≧2 延面積>200m² のどれかにあてはまるもの

4号建築物…上記以外のもの

4号建築物は、1・2・3号建築物以外の建物と定義されているので、
なんだかとても分かりにくいですよね…

そこで、どういった一戸建て住宅が4号建築物の対象になるのか、
具体的に例を挙げていきましょう。

  • 木造平屋→4号建築物
  • 木造2階建て→4号建築物
  • コンクリート造平屋→4号建築物
  • 鉄骨造平屋→4号建築物

逆に、4号建築物にならないのは下記のような建築物になります。

  • 木造3階建て→2号建築物
  • コンクリート造2階建て→3号建築物
  • 鉄骨造2階建て→3号建築物

こうして比べてみると、
4号建築物は比較的小規模な建築物が対象になっていることがわかりますね。

ほとんどの一戸建て住宅は、この4号建築物に該当しているのです。

確認申請書類を作る前に確認しておくこと-事前協議-

和やかなミーティング

それでは早速、確認申請に必要な図面、書類について…
といきたいところですが、
確認申請書類を作成する前に必ず確認しておくべきことがあります。

それは、事前協議の有無です。

建築主事の多くは、確認申請の提出前に事前協議を求めています

事前協議とは、確認申請の提出前に各市町村が用途地域や接道、地区計画等に問題がないかをチェックすることを言います。

市町村によって他にも色々な呼び方があり、
調査報告書、あるいは付属調書といった呼び方をするエリアもあります。

もし事前協議が必要なエリアに建築物を建てようとしている場合、
確認申請の前に事前協議を行う必要があります

事前協議を忘れてしまうと、
確認申請のために必要な図面を一式揃えて提出しにいっても、
受け付けてもらえないのです。

事前協議の審査期間は約一週間前後かかることが多いので、
着工スケジュールに影響することも…

そうした失敗を起こさないためにも、
事前協議が必要かどうかについて、早めに確認しておきましょう
大抵は、建築指導課、あるいは都市計画課にて取り扱っているはずです。

一戸建て住宅(4号建築物)の確認申請に必ず必要な図面・書類

間取り作成中のイメージ

お待たせしました。
それでは一戸建て住宅の確認申請で必要な図面・書類について、
内容を確認していきましょう。

確認申請書(建築物)-第二号様式

確認申請書(建築物)とは、建物を建てる前に建築主事、
あるいは確認検査機関へ提出する必要がある書類のことを言います。

その中でも第二号様式は、A4サイズの申請書類になり、
建築主や設計管理者についての情報、及び建設地やその用途地域等について、
報告する書類になります。

この確認申請書類を提出する義務があるのは本来建築主になるのですが、
記載すべき内容については専門的な知識が必要になるため、
建築主の代わりに代理者(設計者など)が、
建築主に委任されるという形で提出を行うのが一般的です。

委任状

委任状とは、建築主が
誰にどういう行為を委任するのか記載した資料のことを言います。

委任先は工事を依頼する建設会社等にあたり、
行為については確認申請に必要な業務である
確認申請、中間検査申請、完了検査申請等の業務がこれにあたります。

公図・字図(あざず)

公図(または字図)とは、
土地の区画・境界がどうなっているかを図示した地図のことを言います。

確認検査機関では、
この公図をもって建築場所や地名地番の確認を行なっていきます。

概要書

概要書とは、確認申請書と同様の内容が記載された資料のことをいい、
この概要書は一般公開されます。
また、概要書のほか、案内図と配置図の図面も必要になります。

不動産の調査等を行う場合は、
まず役所の建築指導課や都市計画課へ行って、
この概要書を確認することになります。

工事届

工事届とは、建築主の種別や業種、更には工事種別や主要用途などについて
記載した資料のことをいいます。

確認申請に合わせて提出が必要な資料になります。

続いて、確認申請に必要な図面についてみていきましょう。

案内図(付近見取り図)

確認申請の際に、建築物の所在地を示す図面(地図)が必要になります。
最近では、google地図等のマップ資料を添付するのが一般的です。

配置図

確認申請の際に、敷地の形状やその敷地に対して
建物がどういう位置に立つのかを図示した図面が必要になります。
配置図はその役目を果たします。

求積図

求積図では、
敷地の面積と建物の面積、二種類の面積を算出する必要があります

建築物を建てるには、
用途地域に定められる建ぺい率や容積率をクリアする必要があったり、
用途次第では面積によって色々な制限がかかってきますので、
求積図はとても重要で必要な図面になってきます。

各階平面図

いわゆる間取り図のことをいいます。
もちろん間取り図のままでは図面資料とは言えませんので、
確認申請に必要な図面にするために詳細の書き込みを行う必要があります

平屋の場合は、1階部分の平面図を、
二階建ての場合は2階平面図の添付も必要になってきます。

シックハウス計算表

建築基準法ではホルムアルデヒド発散建築材料の対策として、
使用面積の制限、及び室内の換気回数を定めています。

そのため、確認申請の際には
シックハウスについて規定を満たすことが確認できる図面が必要になります。

一戸建て住宅(4号建築物)の確認申請に必要になる場合がある図面・書類

上記に挙げたものが、確認申請を提出する際に
必ず必要になってくる図面になります。

たまに、立面図や断面図も必須じゃないの?

と聞かれることがありますが、
実は4号建築物については立面図や断面図は
確認申請に必ず必要な図面にはなりません。

一戸建ての住宅で、確認申請に必要な図面って
思っているよりもずっと少ないのです。

でも、ここでちょっと待った!

確認申請を提出したことがある方や既に実務をされている方。

うちは立面図や断面図も必須と言われたよ!
って人、きっとたくさんいらっしゃいますよね。

私がよく確認申請を出している確認検査機関でも、
上記で必須と記載した図面だけでは確認申請を受け付けてもらえません。

それは何故か?

実は、都道府県の建築主事や確認検査機関は、確認申請の提出に必要な図面・書類を各々が別途設けているのです。

例えばある都道府県で確認申請の提出に必要な図面一式を揃えたとして、
それと同じ書類の図面で他の都道府県で確認申請が提出できるとは
限らないのです。

ですから、確認申請の提出前には、
提出先の機関に必要な図面・書類がどういったものになるのかを
必ず確認しておきましょう。

ちなみに、確認申請に最低限必要なもの以外は、
確認申請の提出先によってかなり異なっては来るのですが、
下記の種類の図面は提出を求められることが多いです。

立面図

建物の四方向の面を図示した図面になります。

この立面図を確認することで、
建物がどういう形状になっているか確認したり、
窓がどの位置・高さについているのかを確認したりします。

断面図

平面図を上から切断した断面とすれば、
断面図は横から建物を切断した図面といえます。

この断面図では、最高高さや最高軒高といった高さに関する情報をメインに、
建築基準法に定められている内容に適合しているかをチェックしていきます。

確認申請に必要な書類の必要部数

最後にもう一つ重要な点をお伝えしておきます。

それは、確認申請書類の必要部数です。
実は確認申請書類の必要部数についても、どこに提出するかで異なってきます
事前協議同様、確認申請の提出先へ必要部数を必ず確認しておきましょう。

最低限必要な部数は合計2部になり、その内訳は下記の通りです。

  • 正本…審査機関に渡す申請図面一式。正本は、確認審査が終了したら、審査機関にて保管される。
  • 副本…建築主に渡る申請図面一式。建築物が完成するまで、この副本と照らし合わせながら工事の進み具合を確認し、工事完了後はこの副本と検査済証を建築主に渡す。

忘れがちな消防用の図面

更に場合によって必要になってくるのが、消防用の図面です。
初めて確認申請書類を作成する際、この消防用の図面を忘れがちです。

消防に必要な書類は、建築物が消防通知になるか、
あるいは消防同意になるかで異なってきます。

消防通知の場合は、その名の通り消防署にこういった建物を建てますよ!

とお知らせ(通知)するだけなので特段気にすることはないのですが、
消防同意になる場合は、消防署にあらかじめ必要な確認申請図面を
一式チェックしてもらう必要があります。

もし許可が降りなければ(同意を得なければ)、
建築物を建てることができません。

消防同意が必要になりバタバタしないためいも、
確認申請の対象建築物が消防通知になるのか消防同意になるのかを、
下記の内容を参考によく確認しておきましょう。

消防通知と消防同意の見分け方

消防通知になるのか、あるいは消防同意になるのかは、
次の3項目から判断していきます。

①防火地域、準防火地域以外に建てられる建築物

対象建築物が建てられる場所に、
防火に関する指定がない地域や22条区域になっているものについては、
消防通知になります。

一方、準防火地域や防火地域に建てられる場合は消防同意になります。

②併用住宅の場合(住宅と店舗等が一つの建物として建てられる建築物)

併用住宅の場合において、
住宅以外の用途に供する部分の床面積が延べ床面積の1/2以下であり、
更に50㎡以内のものについては消防通知になります。

例を挙げてみましょう。

  • 延べ床面積90㎡の店舗併用住宅の場合

住宅部分が50㎡、店舗部分が40㎡→消防通知
住宅部分が40㎡、店舗部分が50㎡→店舗部分が延べ床面積の1/2以上になることから消防同意

  • 延べ床面積110㎡の店舗併用住宅の場合

住宅部分が60㎡、店舗部分が50㎡→消防通知
住宅部分が55㎡、店舗部分が55㎡→店舗部分が50㎡を超えることから、消防同意

というような使い分けになります。

③一戸建ての住宅・併用住宅以外の建築物

こちらの項目については一戸建て住宅は関係ありませんが、
長屋や集合住宅、店舗など、一戸建ての住宅以外の用途については、
消防同意が必要になります。

まとめ

最後に、確認申請を提出する際に必要な図面・資料を、
ステップを踏みながらおさらいしておきましょう。

①確認申請提出前に、事前協議書(調査報告書、付属調書など)が必要かどうかを確認する

②対象建築物が消防通知か消防同意かを確認する

③確認申請に必要な図面を提出先へ確認する

4号建築物の確認申請に必要な図面、
そして手順について解説していきましたが、把握できましたでしょうか?

なお、4号特例の確認申請には必要ありませんが、
筋交計算や金物の検討などは建物を建てる上で必要になってきますので、
確認申請前にはきちんと計算しておきましょうね。

以上、二級建築士のLIDOMAがお送りいたしました。