- 2021.03.01
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- 2021.12.18
設計士が教える施主検査時のチェックリスト
こんにちは。二級建築士のLIDOMAです。
私は今までに、アトリエ事務所や組織事務所で、多くの注文住宅と建売住宅の設計を手掛けてきました。
そうした中で、一つの区切りとなるのが施主検査です。
突然ですが皆さん、施主検査って、どういったものかご存知でしょうか?
施主検査というイベント
施主検査とは、施主(建築主、つまり家を買った方のことです)が建物の引き渡しを受ける前に、
不備がないかをチェックする日のことを言います。
実はこの施主検査、
とっっっっっても大事なイベントになります!
でも、大事なイベントとは言われたものの、
一体どこを確認して、何に気をつければいいのか全然分からない…
っていうのが、正直なところですよね。
特に気を付けなければいけないのが、
クロスやフローリングにつく傷や汚れになります。
しかし、傷や汚れに気をつけろって言われても、
どの程度の傷から補修をしてもらうべきなの…?と思うのが正直なところ。
そこで本記事では、施主検査について、分かりやすいようにチェックポイント形式でまとめつつ、
実際の写真もお見せしながら掘り下げて解説していこうと思います。
施主検査の内容
改めて、施主検査とはどういったイベントなのか、確認しておきましょう。
施主検査とは、建物が完成し、引き渡しが行われる前に、施主(家を買った人)が不具合や気になることがないかを確認する検査のことをいいます。
施主検査の前に行われる社内検査
基本的には、施主検査をする前に施工会社の方でも、
不具合等がないかの検査を行なっております(社内検査と言います)。
本当は、社内検査の際に全ての不具合を発見し、
お客様には安心して建物を見ていただくのが理想の形ですよね。
しかし、実際は中々そう上手くはいっていないのが現状です。
どうしても、見落としがあったり、あるいは社内検査の後に職人さんが補修に入り、誤って新たな傷を付けることもあります。
そうしたことから、お互いに気持ち良く引き渡しが受けられるよう、
自分たちが一度検査を行ったあとに、お客さまともう一度、
不具合を一緒に確認しておくのです。
この施主検査は、引き渡し前の最後の重要なイベントになりますから、
どういった流れになるのか一つずつ確認していきましょう。
施主検査の時期
建物の規模・内容によっても違うのですが、
外構を含めた一通りの工事が終わる前後の段階に施主検査を行うことが多くなっています。
一番最初にも書いたとおり、通常は施主検査の時期が来ましたら、施工会社の営業さんから連絡があるはずです。
ただ、まれに施主検査を行わない施工会社もあると聞きます。
私が知る範囲ではそんな施工会社は見たことがないのですが、念のため、
「施主検査はいつごろに行いますか?」
と聞いておいた方が安心ですね。
施主検査の時間
施主検査の時間は、30坪から35坪程度の住宅で、
大体2〜3時間程度はかかると思っていた方が良いでしょう。
この時間は、不具合の数によっても大きく変わってきます。
当日の時間にはゆとりをもって望んでおいた方が良いでしょう。
施主検査の前に必要なもの
施主検査の際に必要なものは、
施工会社があらかじめ準備していることも多いです。
ただ、明確な決まりがないことから、会社によってやり方や準備されているものが全然違うことも多いのが実際のところ。
どこまでを施工会社が準備してくれるのか、
自分たちは何を持っていけばいいのか、事前に確認しておくと安心ですね。
それでは早速、必要なものを見ていきましょう!
図面、及び仕様がわかる資料
最初に必ず準備していただきたいのが、打ち合わせ時に使用した、
建築図面、及び仕様関係の書類になります。
建築図面
建築図面とは、間取りを把握する平面図や、敷地と建物の関係が描かれた配置図などです。
仕様が分かる資料
そして、仕様関係の書類とは、フローリングや壁紙の種類、キッチンやユニットバス等の内容がわかるものです。
このとき、電気図と照明プランを忘れがちなので、しっかり準備しておきましょう!
これらの書類は、照明器具の種類や、コンセント・スイッチの位置等を確認するのに、必要になってきます。
図面等の資料を持っていく理由
ちなみに、既に家が出来上がっているのに、
なぜ改めて図面をもとにチェックするのでしょうか?
それはずばり、覚えていない箇所が出てくるから、です。
プラン打ち合わせから施主検査までには期間がある
そもそも施主検査を行う時期は、
プランや仕様を打ち合わせていた時期から何ヶ月も後の時期になります。
すると、よっぽど記憶力が良い人でもない限り、
「あれ、ここって最終的にどうなったんだっけ…?」
という箇所が必ず出てきます。
そうしたときに、打ち合わせした時の資料を持っていれば、
「そうそう、最終的にこうしたよね!」
と思い出しながら確認することができるのです。
現場で、ここってどういう話でこうなったんだっけ…?とならないためにも、
打ち合わせ時に使用した図面を持参して、チェックポイントを確認していきましょう。
変更がわかる資料も忘れずに
更にもう一つ、とても大事な確認事項をお伝えしておきます。
それは、途中で何か内容が変更になった場合、
その変更内容がわかる書類も準備しておくことです。
これは現場でも実際にあることなのですが、工事が始まってから図面内容に変更があった場合、その変更内容が現場で働く職人さんまで届いていないという場合があります。
下記の章ではピックアップしていませんが、この変更内容をまとめた資料を持参するというのは、
隠れた重要なチェックポイントですよ!!
途中で変更になったことが多い場合は、特に注意して確認しておきましょう。
カメラ
最近ではわざわざカメラを用意しなくてもスマホで十分かと思いますが、傷があったり、仕様が違う箇所があった場合、内容を忘れないようにしっかりと写真を撮っておくと良いでしょう。
その場では覚えているつもりでも、家に帰ると
「そういえばあそこはどうなってたっけ?」
というパターンも、とても多くあるので要注意です。
メジャー
通常は、現場監督や担当の営業の方が持っていますので、
「ここの数値を測ってもらってもいいですか?」
と気軽に言っていただければ、すぐに測ってもらうことができます。
ただ、中には気になる箇所があるたびに測ってもらうのはちょっと…
という方もいらっしゃるかと思いますので、自前で一つ準備しておくと心置きなく測ることができます。
施主検査 チェックリスト 内部編
それではいよいよ、施主検査の具体的な内容について確認していきましょう。
施主検査では、確認すべき事項が多くあります。
一度に全て書いてしまうと、ボリュームが大きくなり過ぎて分かりづらいかと思いますので、以下の三部構成に分けてみていきたいと思います。
・内部
・外部
・外構
まずは内部から見ていきましょう。
内部について確認すべき箇所は、大きく分けて下記3つに分かれます。
- 天井、壁、床の、基本的な仕上
- アルミサッシ、内部建具、収納棚
- 設備関係(キッチン、ユニットバス、照明など)
天井、壁、床、巾木のチェックポイント
まずは大枠として、選んだ仕様と間違いがないかを確認しましょう。
■床の仕様は合っているか
フローリング、タイル、フロアタイルなど、選んだものと間違いありませんか?
■壁、天井のクロスがあっているか
標準として選んだ壁紙は合っているか、そして、アクセントクロスの場所と選んだものに間違いがないかを確認しておきましょう
仕様の確認ができたら、傷・汚れのチェックです。
フローリングに傷、汚れはないか、壁紙に汚れや割れがないか、時間をかけて入念に確認していきましょう。
ただ、傷や汚れを…と言われても、どれぐらいのレベルから傷や汚れと見做すのか、その判断が実際は難しいですよね。
そこで、ここからは実際の写真を参考にしながら、一緒にみていきましょう。
■床、巾木の傷
床材を貼る過程では、傷がつかないように細心の注意を払いながら貼っていきますが、
それでもちょっとモノを落としたときや、気付かないうちに角にぶつけたりして、凹ませたり傷がついたりすることがあります。
すぐに気付けた場合は、補修したり、
程度がひどい場合は交換したりするのですが、
中には気付くことができず、そのままになってしまっている箇所もあります。
では床材の傷とはどういったものになるのでしょうか?
こちらが参考写真になります。
数mm程度ですが、ちょっとした凹みになっていることがわかりますね。
こうした補修が必要な箇所には、マスキングテープを貼り、
後から補修屋さんが確認しやすいようにしておきます。
■巾木とクロスの繋ぎ目について
以下の写真を見るとわかるとおり、
壁紙と巾木の間に隙間が空いてしまっていますね。
通常、こうした箇所はコーキングという、隙間を埋める充填材を使って機密を保っていきます。
このコーキングが忘れられている箇所はたまに見かける内容になりますので、よく確認しておきましょう。
アルミサッシ、内部建具、収納棚のチェックポイント
アルミサッシとは、いわゆる窓のことを言います。
アルミサッシのチェックポイントとしては、以下の通りです。
・開閉がスムーズかどうか
・窓枠に汚れや傷がないか
・ビスがきちんと留められているか
窓枠は、以下の写真のような部分ですね。
この現場では、窓枠にのり汚れがありましたので、マスキングテープでチェックをしています。
また、見落としやすいのが玄関ドアの確認です。
最近の玄関ドアは電気錠になっており、
リモコンやカードキーといったもので解錠できるようになっています。
車の鍵みたいな感覚、といえばイメージしやすいでしょうか。
最近の車は、離れている場所からリモコンをポチッと押したり、
あるいはキーも持った状態でボタンに軽く触れるとロックを解除できますよね。
あれと同じことが、家の玄関ドアでも可能になっているのです。
ただ、このシステムは最初に初期設定が必要になりますから、
設定の仕方等、よく話を聞いておきましょう。
■内部建具について
内部建具とは、開き扉や引き戸といったものですね。
こちらについても基本的な確認事項はアルミサッシと同様です。
・開閉がスムーズかどうか
・枠、建具本体に汚れや傷がないか
内部建具は、アルミサッシよりも開閉具合が悪くなりやすいので、
ちょっと開きにくいな…と思ったときは、遠慮なく尋ねてみましょう。
■収納棚について
収納棚は、図面や打ち合わせ資料に、奥行きや枚数が書かれているかと思います。
例) D450 * 6枚→奥行き45cmの棚が6枚
収納箇所にきちんと必要な棚板があるか、念のため確認しておきましょう。
設備関係についてのチェックポイント
設備機器関係で主に確認すべきものは、
・キッチン
・浴室(ユニットバス)
・洗面化粧台
・電気設備器具(照明、スイッチ、コンセント)
になります。
施主検査の際、住宅設備と言われる、キッチン、ユニットバス、洗面化粧台については、
その設備器具を作っているメーカーさんから直接使い方の説明があります。
メーカーさんが、使い方からメンテナンス方法までしっかりと説明してくれますので、何か不明な点があれば遠慮なく聞いておきましょう。
ただ、最近の設備は本当に色々な機能がついていますから、一度に全てを理解するのは難しいかもしれません。
そこで、使い方等について不明な点が出てきた場合に、
どこに連絡をすればいいのかも、一緒に確認しておきましょうね。
■照明器具について
照明器具については、調光器具等の特殊なものの使い方以外は、
施主検査にてあまり説明がないことが多いです。
それに、検査日は明るい時間に行われることがほとんどですから、
照明器具にまでは、関心がいかないことも…
しかし、ちょっと待った!
器具の種類から、光の色(昼白色、電球色など)、器具の位置など、
打ち合わせ内容と違う箇所があることがまれにあるのです。
もちろん基本的には、施工会社がしっかりと確認を行わなければいけない部分になります。
ただ、人のすることですから、ミスがあるかもしれないと思い、
しっかりと確認しておいた方が安心ですね。
では、具体的な確認方法についてみていきましょう。
先ほどの持ってくるものリストにて説明しました、
照明プランと電気図を見てみてください。
照明プランは何が書いてあるかというと、照明器具の種類、色(昼白色、電球色等)など、照明器具に関する様々な情報が載っています。
この照明プランを元に、照明器具が間違っていないか、確認しましょう。
一方、電気図の方は何が書いてあるかというと、こちらには、
照明器具、スイッチ、コンセントの、設置位置や高さについての情報が記載されています。
この電気図を元に、照明器具の位置、スイッチの位置、コンセントの位置、
1箇所ずつ丁寧にチェックしていきましょう。
ちなみに、スイッチが繋がっているか、コンセントに電気が通っているかも、できれば確認しておきたいチェックポイントです。
でも実際、そこまで確認していくとどこまで時間がかかるのか分からない…というのが正直なところ。
そこで施主検査の際には、とりあえず最低限、ここだけは絶対に使う!っていう箇所だけでも確認しておいてください。
その後、住みはじめてからスイッチやコンセントの不良を見つけた場合は、施工会社に連絡してください。
スイッチがつかない、コンセントに電気が通っていないなど、
こういった不具合は、施工不良になりますから、すぐに対応を依頼して大丈夫です。
施主検査 チェックリスト 外部編
内部の確認事項について一通り確認できましたので、次は外部のチェックポイントをみてきましょう。
外部のチェックポイントは、下記四点になります。
・基礎
・外壁
・アルミサッシ
・ポーチ等の仕上
基礎のチェックポイント
基礎のチェックポイントは、下記二点になります。
・ひびが入っていないか
・シミや塗りムラがないか
ひびは、どれぐらいの大きさから問題になるのかがわからないとよく言われるのですが、
幅0.3mm以下、深さ4mm以下のひびについてはヘアークラックと言われ、特に問題はありません。
しかし、この数値を大きく超えるようなひびについては、次第にひびが広がっていったり、雨水が入り込んで鉄筋が錆びたりすることがあります。
もしこのようなひびを見つけた場合は、すぐに報告しましょう。
また、シミや塗りムラも確認しておきましょう。
部分的にやけに濡れた感じになっていたり、場所によってムラが激しい場合は、補修をお願いしてみましょう。
ただ、基礎の仕上げは、使う材料によってはどうしても多少のムラが出てきてしまいます。
どこまで対応できるのか、施工会社と相談しながら決めていきましょう。
外壁のチェックポイント
外壁材は、サイディング、左官壁、ガルバリウム鋼板など、様々な種類が存在します。
ここでは、一番使用率の高いサイディングについて確認していきましょう。
サイディングの確認すべき点は、傷・汚れとコーキングです。
傷については、引っ掻き傷のようなものがあったり、塗装が剥がれてしまったりしている部分があるので、その場合は指摘しておきましょう。汚れについても同様です。
コーキングとは、サイディング材とサイディング材の間にある、ゴム状の充填材のことを言います。
このコーキングがしっかりされているかどうかが、防水上、重要な点になりますので、こちらも十分に確認しておきましょう。
また、施主検査時には、2階以上の高い部分は中々見ることができません。
しかし、目の届くところだけでもしっかりと確認しておくことが大切です。
その他外部仕上のチェックポイント
■アルミサッシについて
アルミサッシについては、内部の検査内容のときにも確認していますが、外部の検査の際にも、外側の方に傷や汚れがないかは確認しておきましょう。
■ポーチ等の仕上について
ポーチは、モルタルやタイルなどで仕上げられることが多いですね。
こちらについても、タイルの貼り忘れがないか、汚れがないか、ムラがないか等について、チェックしておきましょう。
外構についてのチェックポイント
最後に、外構について確認しておきましょう。
外構工事は、引き渡しギリギリまで工事をしていることが多く、施主検査の際にどこまで確認ができるかは、現場によって大きく異なります。
施主検査の日にまだ外構工事が終わっていない場合は、
外構についてはまた改めて検査をお願いした方が良いでしょう。
もう工事が完了している場合は、以下の内容について確認していきましょう。
・図面と照らし合わせて、計画通りの内容になっているか
・モルタルなどの塗りムラがないか
・独立型ポストなどの場合、決めた内容のものが付いているかどうか
外構は、テイストによってもかなり内容が変わってくる工事でもありますので、図面の通りに出来上がっているかを確認することが大切です。
また、植栽がある場合は、樹種によって手入れの方法が異なってきますので、育て方についてもアドバイスをもらっておくとなお良いですね。
まとめ
以上、長くなりましたが、いかがだったでしょうか?
施主検査は、確認すべき事項がとても多くて不安になってきますよね…
そこで、必ずここだけは確認してほしい!という点を最後にお伝えしておきます。それは、“傷、汚れ”に関する部分です。
それは、何故か?
例えば、フローリングが選んだものと違ったり、照明器具が違ったり、キッチンから水が出なかったり…といった類のものは、施工不良になりますので、あとから気付いたとしても補修してもらうことができるんですよね。
しかし、傷や汚れについて、一概に補修してもらえるかは分かりません。
それは、一度住んでしまえば、傷や汚れを見つけた際に、住みはじめた方と施工会社、一体どちらがその傷を付けたのか分からなくなってしまうからです。
後からもめないためにも、傷・汚れだけは施主検査の際にしっかりと確認しておきたいですね。
以上、LIDOMAでした。