- 2021.06.26
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- 2021.12.18
建築士が考える、住みやすい間取りとは
こんにちは、二級建築士のLIDOMAです。
私は今までに、アトリエ系や組織設計事務所にて、多数の注文住宅、建売住宅などを手掛けてきました。
そうしたいくつもの経験の中で、これは住みやすそう!と思ったものもあれば、
もう少し改良の余地があったかもしれないなーと感じたものもあります。
そこで本記事では、二級建築士の私が考える、住みやすい間取りとは?
というテーマについて、考えてみたいと思います。
住みやすい間取りは共通する条件がある?
住みやすさというものは、当然ながら人によって異なってきます。
なので、私が住みやすいと感じた間取りが、多くの人も住みやすいと感じるかはわかりません。
しかし、常日頃住みやすさについて考えていく中で、住みやすい間取りにするためにはいくつかの条件があることに気が付きました。
住みやすいとは?
そもそも、住みやすい家とは、どういった家になるのでしょうか。
私が住みやすいと考える家は、生活動線・家事動線がスムーズであり、適度な通風と採光がとれ、家族のコミュニケーションについて考えられた家です。
住みやすい生活動線と、住みにくい生活動線
生活動線とは、普段の生活の中で、家族がどのようなルートで動いていくのかを線にしたものをいいます。
帰宅時の生活動線は、玄関から廊下、廊下から洗面所(手を洗う)、そしてリビングという動線になるし、テレビを見ている最中に一度トイレにいき、またリビングに戻ってくるという動きも、一つの動線になります。
住みやすい間取りを作るためには、この生活動線をしっかりと計画してあげることが重要なんです。
一つ、例を出しましょうか。
例えば、スーパーから返ってくるときの生活動線を考えるとします。
玄関を開けると、あなたの手にはたくさんの荷物。お肉や牛乳など、すぐに冷蔵庫にしまいたいものもあるでしょうから、すぐに冷蔵庫に入れたいですよね。
このときに、玄関から冷蔵庫までの距離が短ければ、生活動線は良く、逆に玄関から冷蔵庫までの距離が遠ければ、あまり生活動線は良くないと考えられます。
間取りのバランスもありますから、玄関から冷蔵庫までの距離が短い方がいい間取りということではありませんが、こうした一つ一つのバランスをとりながら、生活動線を意識することで、いい間取りは出来上がるのです。
住みやすい家事動線
生活動線のことがわかれば、家事動線もイメージしやすいでしょう。ずばり、家事動線とは家事をする際に動く線のことをいいます。
先程のように例えるならば、キッチンからお風呂までの距離や、洗濯場から物干し場までの距離などです。
キッチン、お風呂場、洗面所、物干し場、といった家事を行う場所は、とても行き来が多いですよね。なので、この場所同士が近い位置関係にあると、住みやすい間取りになり、逆に離れていくと住みにくい間取りになってしまうのです。
洗濯場(洗面所)と物干し場が遠いと、洗濯機から洗濯物を取り出してから物干し場までに行くのが面倒くさくなる…といった具合です。
採光と通風
採光と通風も、住みやすい家にするにはとても重要です。
ただ採光が欲しいからといって、単に窓を大きくすればいいというものでもなく、周囲の建物の配置や、方位、部屋と部屋の関係性まで考えた上で、窓を配置する必要があります。
例えば、明るい方が良いからと思って、西側にも大開口窓を設置すると、夏はめちゃくちゃ暑い部屋になってしまいますよね…
窓の高さも、庇の有無によって調整が必要です。
また、通風も同様です。
風の通りをよくするためには、風の抜け道を作って上げる必要があります。
風のとおり道を作るテクニックとしては、部屋の端と端に窓を配置したり、一方の窓を低い位置に設置し、もう一方の窓を高い位置に設置するなど、様々な配置テクニックがあります。
また、大きい窓を配置できない箇所には、縦すべりだし窓を設置すると、家の周囲を流れる風をキャッチし、室内に風が流れ込んでくるなどのテクニックもあります。
家族間のコミュニケーションのしやすさ
コミュニケーションのしやすさについても、住みやすい家には重要な要素です。
単純に、家族が気軽にコミュニケーションしてるお家って、素敵だと思いませんか?
そうした家を作るためには、とにかくリビングの重要性を高める必要があります。
十数年前は、とにかくプライベートへの意識が高かったので、いかに個室のプライバシーを守るかが重要視されていました。その結果、家族間のコミュニケーションが希薄になってしまたのです。
そうした背景もあり、昨今では家族間のコミュニケーションが重要視されています。
例えば階段一つとっても、階段をリビング内に持ってくるか、それとも廊下沿いに設置するかで、コミュニケーションのしやすさが変わるのです。
住みやすい間取りの条件
住みやすい間取りにするためには、全体的なバランスがとても重要です。
しかし、全体的なバランスとは、一つ一つの間取りによって変わってくるものです。
そこで今回は、玄関やリビング、寝室や子供部屋といった、一つ一つの部屋ごとに考えてみようと思います。
玄関について
コンパクトな間取りや、予算を抑えようと考えたときに、玄関の大きさは削られがちです。
何故なら、長く滞在するリビングや寝室などの居室と違い、玄関は出かけるとき、帰ってくるときといった、一時的な利用だけで終わる場所だからです。
しかし私は、住みやすい間取りを考える上で、玄関の存在はとても重要な場所だと考えています。
例えば、仕事や買い物等を終えて、疲れ切った自分を真っ先に迎えてくれるのは、玄関です。
そうした玄関が、狭くてとても窮屈なものであったらどう感じるでしょうか?
早くリビングに行きたい、早く個室に行きたい、といった気持ちが強くなりそうですよね。
しかし玄関は、外に出かけるときも、家に帰ってくるときも、真っ先に自分を迎えてくれる場所。
どちらにしろ通る場所であれば、少し広めにとって、もっと快適な空間にした方が絶対気持ちいいです!
それと忘れてはいけないのが、採光をしっかりととること、です。
外からの光がふんだんに入ってくると、玄関は本当に清々しい気持ちになれます。
玄関は、建築基準法で定義される居室には当たりませんので、極端にいえば採光を全くとらない仕様にすることもできます。
実際、マンションの玄関は窓がないことが多いですよね(マンションという制約上、仕方がないのですが)。
一方、戸建てでは、間取り次第で十分に採光をとることが可能です。
玄関の採光を取る方法は、
・窓付きの玄関ドアを採用する
・玄関の壁に窓を設置する
という、2つの方法があります。
しかし、快適な玄関を作りたいのであれば、玄関ドアの小窓にはあまり頼らず、しっかりと壁に窓を付けた方が良いでしょう。
玄関ドアの小窓でとれる採光は、大した採光にはなりません。
玄関ドアの採光頼りで空間を作ってしまうと、思っていたよりもずっと暗い玄関になることも…
玄関やホールにしっかりと採光をとり、気持ちの良い玄関にしましょう!
収納について
住みやすい間取りについて考えるときに、収納について触れないわけにはいかないでしょう。
それぐらい、住みやすさと収納量は密接に関係するものです。
収納を考える上でとても重要なことは、大容量の収納を作るよりも、
小さな収納をいろんな場所に散りばめた方が、遥かに使いやすいということです。
注文住宅では、収納は多めがいいので大きい収納を!というご要望をよくいただきます。
このときに、寝室だけに大容量の収納を作り、後はほとんど収納がない、なんて間取りにしてしまうと、大変使いにくい間取りになってしまうのです。
某建売メーカーの間取りや、不動産チラシの間取りをみても、そういう間取りは本当に多いです。
しかし、実際にその収納を使うイメージをしてみてください。
例えば、1坪程度(有効 1.6m x 1.6mぐらいの大きさ)の四角い大きな収納部屋があるとします。
その部屋自体は大きな収納ですから、たくさんモノが入るでしょう。
でも、果たして取り出すときはどうでしょうか?
取り出したいものが手前にあればまだいいのですが、
奥深くにあると、手前のものをどかさないと、奥にあるモノをとることができません。
また、収納スペースにモノがいっぱいの状態だと、
一旦どかす必要があるものをどこに置くのかにも困ります(廊よくあるのが、廊下が埋まり人が通れない!といったパターン)。
そうした大容量の四角い収納スペースよりも、横長の収納スペースがいくつかあった方が、遥かに使いやすいのです。
また、収納スペースの場所も重要です。
例えば2階建ての住宅で、1階は広々として使いたいのでほとんど収納を作らず、2階にまとめて収納を作っている間取りをたまに見かけますよね。
私には、こういった間取りも使い勝手が悪いと感じてしまいます。
何故なら、1階には収納が欲しい場所がたくさんあります。
玄関周りにはSIC(シューズ・イン・クローク)があると便利だし、洗面脱衣室にはちょっとした収納があると随分使いやすくなります。
キッチン周りも、最近は便利な家電が多く存在しますので、バック収納とは別にちょっとしたパントリーがあると、かなり使い勝手は向上します。
しかし、1階にあまり収納を待たない間取りだと、こうした備品が目に見えるところに出てきてしまうので、結果的に、見た目が悪く、使い勝手も悪い間取りになってしまいがちなのです。
ただ、まとまった収納がすべて悪いわけではありません。リビングクロークやファミリークロークは、とても使い勝手の良い収納です。
このあたりは、また別の記事で詳細を解説していきますね。
キッチンについて
キッチンには、大きく分けて対面キッチンと壁付キッチンの二種類に分類されます。
そして、大抵の記事では対面キッチンの方がオススメだと紹介されているでしょう。
しかし、対面キッチンはどんな人でも使いやすい、という訳ではありません。
まず、それぞれの特徴をみてみましょう。
対面キッチンのメリットは、料理をしながら色々なことができること、です。
料理をしながら、TVを見たり、家族と話したり、小さなお子様の様子を伺ったり…
つまり、料理をしながら+αを楽しみたいという人にオススメのプランなのです。
一方、壁付キッチンのメリットは何でしょうか?
それは、対面キッチンとは逆に、料理に集中できることです。そこまで数は多くないのですが、料理に集中したいから壁付キッチンが良いという方は一定数いらっしゃいます。
実は私も、壁付キッチン派です。
また、LDKをできるだけ広くしたい!という方にも、壁付キッチンはオススメの間取りです。
対面キッチンは、壁付キッチンと比べ、多くのスペースを必要としてしまいます。
特にマンションリノベーションなどでは、限られたスペースの中で極力LDKを広くために、壁付キッチンを採用することがよくあります。
このように、とりあえず対面キッチンにしていれば大丈夫!ではなく、自分に合ったスタイルは何かを考えてから対面キッチンか壁付けキッチンかを選ぶと、後悔しませんよ。
まとめ
以上、簡単ではありますが、住みやすい間取りとは何か?について考察してみました。
このトピックについては、徐々にコンテンツを増やしていこうと思いますので、楽しみにしておいてくださいね。
以上、二級建築士のLIDOMAmaがお送りしました。