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2階建て住宅の外観

建築士が解説!住宅の外壁材選び講座

皆さんこんにちは、二級建築士のLIDOMAです。

住宅の外観の決め手になるのは、なんといっても外壁材ですよね!かっこいい外壁材を使った住宅は、その見た目もピカイチ。

でも、外壁材ってとにかくたくさんの種類があって、一体どうやって選べばいいか分からない…
そもそも、どんな種類があるの?って方も多くいらっしゃると思います。

ちなみに、外壁材は建物の構造によって、向き・不向きがあるのはご存知ですか?

日本における住宅で使用される構造は、木造が半数以上を占め、
ついで鉄筋コンクリート造、鉄骨造と続いていますが、
実は木造と鉄筋コンクリート造・鉄骨造では、向いている外壁材が異なってきます

”外壁材 選び方”みたいなキーワードで検索すると、そういった構造による向き不向きをきちんと説明しているサイトが中々見つかりませんでした。
そこで、本記事では構造に合った選び方という観点も踏まえて、外壁材の選び方をお伝えしておきます。

外壁材のシェア率について

住宅の外壁材には様々なものが使われていますが、まずはそのシェア率を確認していきましょう。
外壁材のシェア率については、日本窯業外装材協会さんのサイトから確認することができます。
https://www.nyg.gr.jp/toukei/index.html

こちらを確認すると、住宅で使われる外壁材のランキングは下記のようになっています。

1位:窯業系サイディング 78.3%
2位:アルミサイディング 8.8%
3位:モルタル 5.8%
4位:金属サイディング 3.7%
5位:ALC 0.4%
6位:木質 0.8%

それぞれの外壁材がどういった特徴を持つのかは後ほど解説していきますが、
窯業系サイディングというものが圧倒的に使われていることがわかりますよね。

それでは早速、先ほどのランキングを元に、これらの外壁材がどういった特徴を持っているのかを確認してみましょう。

窯業系サイディングについて

窯業系サイディングとは、セメントをベースに繊維質、混和材を混ぜることで作られる、
板状の外壁材のことを言います。
セメントを使った外壁材なんだな、ぐらいの理解で問題ありません。

特徴

セメントについてはご存知の方も多いかと思いますが、コンクリートを作るために使われる材料の一つです。

コンクリートをイメージしてもらうと分かりやすいかもしれませんが、安価で手に入り、加工がしやすく、耐震性・防火性にも優れているという特徴を持ちます。

つまり窯業系サイディングとは、セメントを原料とすることで下記のような特徴を持つ材料になるのです。

①比較的安価で作れるので、価格を抑えることができる
セメントをベースにしていることから、価格を抑えることができます。
数ある外壁材の中でも、最もコストパフォーマンスの良い外壁材になるでしょう。

②加工がしやすい
加工がしやすいということは、バリエーションに富んだデザインのものを作ることができるということです。
実際、窯業系サイディングを扱っているメーカーのHPを確認すると、タイル風、木材風、石張り風といった、実に様々なテイストを持っており、またその色も多様です。
下記に大手メーカーHPのリンクを貼っておくので、気になる方はぜひ一度確認してみてください。
ニチハ株式会社 https://www.nichiha.co.jp/
ケイミュー株式会社 https://www.kmew.co.jp/

③強度があり、防火性にも優れている
先ほども述べたとおり、窯業系サイディングはセメントを使っていることから、強度が高く、また防火性にも優れています。
防火に厳しいエリアでも、問題なく使用できる外壁材です。

ざっと窯業系サイディングの特徴を挙げましたが、これだけメリットがあるのですから、
7割を超える住宅で使われている材料というのも、納得がいきますね。

メンテナンス性

住宅に長く住むためには、メンテナンスは欠かせません。それは外壁も同様です。
そこで、窯業系サイディングのメンテナンス性について、確認していきましょう。

窯業系サイディングのメンテナンスは、サイディング自体のメンテナンスと、サイディングとサイディングの間を埋める充填剤(シール)、2つのメンテナンスが必要になります。

どちらも、大体10年を目安にメンテンスが必要になってきますが、この年数は使用するサイディングの仕様によって大きく異なります。

実際、大手サイディングメーカーのニチハのHPでは、
最も安価なサイディングでは10年を目安に塗り替えが必要としていますが、最もグレードの高いサイディングにおいては30年〜35年を目安に塗り替えか張替えを提案しています。

窯業系サイディングを選ぶ際は、そのメンテナンス性についても気にしながらチェックしておきましょう。

使われる構造

窯業系サイディングが最も使われる構造は、木造です。
木造で外壁材を検討する際には、真っ先に候補に挙がってくる外壁材になるでしょう。
木造に次いで使用されるのは、鉄骨造ですね。鉄骨造で建てるハウスメーカーなども、よく窯業系サイディングを使用しています。

一方、鉄筋コンクリート造の場合は、あまり使われません。鉄筋コンクリート造でサイディングを使う場合は、本来不要な下地を組む必要があるため、コストパフォーマンスがあまり良くないのです。

ただし、鉄筋コンクリート造でも、外壁のリフォーム工事の際には、使われることもあります。

金属サイディングについて

続いて、金属サイディングについてみていきましょう。
先ほどのシェア率のランキングでは、アルミサイディングと金属サイディングが分かれていましたが、アルミサイディングも金属サイディングの一種になります。
ここでは、ひとまとめにして解説していきます。

特徴

金属サイディングとは、表面の仕上げ材に薄い金属板を使用し、裏に断熱材を貼った、板状の外壁材のことを言います。

金属の持つ、高い耐候性・耐久性を活かした外壁材であり、裏に断熱材も使用していることから、窯業系サイディングと比べ断熱性能も高まります
また、セメントで作られる窯業系サイディングと比べとても軽いことから、施工性も良いです。

新築の住宅で使われるのはもちろんですが、その施工性をより活かせる、リフォーム市場で大変よく採用される外壁材です。

外観についても、窯業系サイディングと比べよりスタイリッシュなデザインにできることから、外観に惹かれて金属サイディングを選ぶ方も多くいらっしゃいます。

一方、価格については窯業系サイディングよりも高額になります。本当は金属サイディングが良かったけれど、コストの関係上、窯業系サイディングにしました…という方もいるぐらいです。

性能やスタイリッシュなデザインをとるか、コストをとるか、判断が分かれるところです。

また、金属サイディングで使われる金属は、主に下記の二種類になります。

・ガルバリウム鋼板
金属サイディングと言えば、通常このガルバリウム鋼板で作られたサイディングのことを言います。このガルバリウム鋼板は、屋根材にもよく使われる素材で、耐候性や耐久性に優れています。

・アルミ
アルミの特徴は、軽くて丈夫、という点です。住宅の窓(アルミサッシのアルミ)にもよく使われる、馴染みのある素材ですね。ガルバリウム鋼板と比べ、より軽く、耐久性・防錆性に優れています。

メンテナンス性

金属サイディングは、メンテナンス性がとても良いです。どの金属を使用するかにもよりますが、耐用年数は概ね30年と言われています。軽い分、建物本体に大きく負荷を与えないのもポイントでね。

使われる構造

構造については、窯業系サイディングと同様、木造が最も多くなります。
また、先ほども述べた通り、外壁のリフォーム工事で多く使われるのは金属サイディングならではの特徴でしょう。

塗り壁(モルタル)について

続いて、塗り壁についてです。

先ほどの日本窯業外装材協会の資料では、単にモルタルと表記されていました。
しかし、外壁材の選択肢として考えたときに、モルタルを含む塗り壁(左官壁)全般について検討した方が良いので、この章では塗り壁について解説していきます。

特徴

塗り壁の特徴は、なんといってもその独特の風合いでしょう。私も大好きな仕上げ材の一つです。
元々、日本の住宅には漆喰(しっくい)壁土壁といった塗り壁が、多く使われてきました。伝統の仕上げ材といっても過言ではないでしょう。

古くから受け継がれた左官職人さんの腕によって、色々な表情を作ることができるのが魅力です。

しかし一方で、汚れが目立ちやすく、ひび割れが発生しやすいというデメリットもあります。塗り壁は自然素材ですので、どうしても汚れやある程度のひび割れは生まれてしまうのです。

ですので、自然素材独特のあの質感が好きでたまらない!という方にはぜひ推したい外壁材になるのですが、コストパフォーマンスやメンテナンス性を重要視される場合、あまりお勧めはできない外壁材になります。

メンテナンス性

塗り壁は、その性質上、細かな凹凸が多い素材です。凹凸が多いということは、その隙間にゴミやホコリが溜まりやすいということです。つまり、汚れやすいのです。

また、大きめなひび割れが起きた場合は、補修も必要になってきます。小さなひび割れ(クラック)は特に問題ありませんが、大きなひび割れが発生した場合は漏水の原因にもなってしまいますので、すぐに施工会社に連絡しましょうね。

使われる構造

塗り壁は、元々日本の伝統家屋に使われていた技術ということもあり、木造で使われることが最も多いでしょう。鉄骨造、鉄筋コンクリート造でも使用することは可能です。

ALCについて

続いて、ALCについての解説です。

いきなりですが、このALCってどういった言葉の省略記号かご存知でしょうか?分かる方がいたらかなりすごいです…!笑

ALCとはAutoclaved Lightweight aerated Concreteの頭文字をとったもので、ざっくり簡単に言うと、気泡を入れることで軽量化したコンクリート、という意味です。

ALCは鉄骨造との相性がよく、元々は中高層建築物の外壁や床などに多く使われていました。
しかし近年では、ユニバーサルホームやヘーベルハウスなど、大手のハウスメーカーが外壁材にALCを選択する例が増えており、住宅でもALCを見かけることが増えてきています。

特徴

このALCは、気泡を持つために軽く、断熱性・遮音性にも優れ、火にも強いといった多くのメリットがあります。
素材自体の耐久性も、サイディングよりも耐久力があります。

しかし一方で、気泡がるあることから水分が染み込みやすく、塗装をすることで防水処理を行うことが必須の材料でもあります。ALC自体の耐久力は素晴らしいのですが、塗装を怠ると一気に性能が落ちてしまいます。
また、寒冷地で使用する場合は、水分が染み込むと凍害を起こしてしまうので注意が必要です。

その他の特徴としては、特有の外観が挙げられます。
中高層の建築物によく使われる材料ということもあり、住宅で使用した場合、外観がちょっと…という方も。

自分の好みと合っているか、気になる方はハウスメーカーのサイト等でチェックしてみてくださいね。

メンテナンス性

上記でも述べたように、ALCは塗装による防水処理が必須の材料です。その塗装頻度は大体10年が目安と言われております。
この塗装を怠ると、内部に水が侵入してしまい、膨張やひび割れを起こしてしまうのです。膨張やひび割れが起きると、修復が難しくなるケースもあるので、ALCのメンテナンスは必須と覚えておきましょう。

使われる構造

元々鉄骨造で使われていたこともあり、一番相性が良いのは鉄骨造です。ただし、木造においてもALCの厚みを薄くすることで採用可能です(それでもサイディングよりはずっと厚みがあります)。

木質について

続いて木質系についてです。木質系の外壁は、杉やヒノキなどを使い、板張りで仕上げます。
板張りで作られた住宅も、日本の伝統的な住宅の趣があり、とても良いですよね…特に、別荘で板張りの住宅に住めたりしたら最高だな!と私も思っています。
そんな木質系の外壁材は、どういった特徴を持っているのでしょうか?

特徴

木質系の大きなメリットは、木材が持つ、ぬくもりとデザインでしょう。木材が好きな人にとって、経年変化する外壁の様子を見るのはとても楽しいものです。

一方で、デメリットについても、その経年変化ゆえともいえます。
木材が好きな人にとっては、経年変化する木材は興味惹かれるものですが、木材があまり好きではない人にとっては、汚れ具合の方が気になるかもしれません
また、後述するメンテナンス頻度についてもデメリットの一つと言えるでしょう。

メンテナンス性

木材は、その他の外壁材と比べて、素のままだととても朽ちやすい材料です。
ですので、キシラデコール等の保護塗料を塗る必要があります。

再塗装の目安は一般的に3〜5年程度になり、どれだけ風雨に晒されているかによっても大きく変わってきます。

庇がほとんどないデザインの建物では劣化のスピードがとても早く、庇によって守られている部分は劣化のスピードが緩やかです。
なので、外壁に木材を使用する場合は、庇を上手く活用するとメンテナンス性も向上すると言えるでしょう。

使われる構造

木材は、どの構造においても採用可能です。ただ、外観含めると一番相性が良いのは木造かもしれません。
ちなみに、木材を外壁材に使う場合、防火上、そのままでは使用できない地域が存在します。

木材を外壁に選択する際は、使用可能か担当の営業に確認しておきましょう。

まとめ

以上、住宅で使われる外壁について解説していきました。

外壁材は、住宅の外観を決めるといっても過言ではない、とても重要な材料になります。
本記事を参考に、ぜひ自分に合った外壁を選んでくださいね!

以上、LIDOMAがお送りいたしました。