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LIDOMA -建築士が作る間取りの教科書-

ウッドショックとは?原因から今後の影響まで幅広く解説

皆さん、こんにちは。二級建築士のLIDOMAです。

今、住宅業界ではウッドショックと呼ばれる木材の高騰が起きているのはご存知でしょうか?
このウッドショックは、1970年代に起きた石油ショックになぞらえ、そう呼ばれるようになったようです。

2021年は、このウッドショックにより住宅の価格が通常よりも高くなることが予想されます。
また、それにともない請負契約書に特記事項が追加される場合もあります。

そこで本記事では、
ウッドショックとは何か?原因・影響は?
という点から、請負契約書の特記事項に関する内容まで、幅広く解説していこうと思います。

ウッドショックとは何か?

ウッドショックとは、世界規模で起きている、木材価格が高騰している状況のことをそう呼んでいます。

ことの始まりは、2021年3月頃ぐらいだったでしょうか。
プレカット屋さん(木材を加工する工場)から、木材が供給不足に陥っているという話を聞くようになりました。

最初に話を聞いたときは、恥ずかしながらここまで大きな影響が出るとは思っておらず、
木材の費用が若干上がりそうだな、ぐらいにしか考えておりませんでした。

しかし、4月になった頃から、これは思ったよりも大変なことになりそうだな、と考えが改まっていきます。
木材の仕入れ金額が上棟の直前まで確定せず、また日を追う度に価格がどんどんと上がっていったのです。

更に6月頃には、各住宅メーカーが住宅の値上げを行ったり、中小の工務店では木材が納品できずに工期が大幅にずれたりと、住宅業界に様々な影響が出始めているのです。

会社によっては、木材の盗難対策まで始めているような状況です。
ではこのウッドショック、一体何が原因なのでしょうか?

ウッドショックの原因

ウッドショックの原因は、大きく分けると次の3つに分けられます。
この章では、その要因ごとに内容をみていきましょう。

コロナの影響により、世界中で木材の需要が高まる

原因の一つとしてまず挙げられるのが、世界中で木材の需要が高まっていることでしょう。

コロナが広がる中、家で過ごす時間が多くなったことから、巣ごもり需要やテレワークといった言葉が流行りだしたのを覚えていますか?
コロナが広がり始めた頃は、連日ニュースで特集などが組まれていましたよね。

住宅業界においても、コロナが流行り始めた頃こそ売上が落ちていたものの、色々な方が家で過ごす時間が多くなり、住まいに対する注目が高まったことで、家を購入する人が増えたり、DIYをしたりする人が増えてきていました。

しかし、この巣ごもり需要やテレワーク。日本に限らず、世界中で流行っていたのです…!

つまり世界中で、巣ごもり需要やテレワークが増えてきています。
そうすると何が起きるのでしょうか?
実は、家を作るための資材が取り合いになるのです。

日本では今までに、建築するために必要とされる木材の、6割以上を海外からの輸入に頼っていました。
つまり、多くの住宅は外国から輸入される木材で作っていたのです。

輸入材が多く使われるようになった原因は、林業の衰退や後継者不足など色々ありますが、
国産材よりも輸入材の方が安く手に入るということが、大きな要因になっています。
つまり、販売価格を抑えるために輸入材を使っていたということですね。

しかしコロナの影響により、世界中で木材の需要が高まったことから、
日本に輸入木材が入らなくなってしまったのです。

木材の需要は世界中で高まっていますが、中でも特に影響力が大きいのが、アメリカと中国です。

米国においては、コロナ対策で打ち出した低金利政策により、
住宅需要が爆発的に増え、建築ラッシュが起きていました。
中国でも、コロナの感染状況が落ち着いてからというものの、住宅の需要が拡大しているようです。

アメリカの住宅需要は、今後少しずつ落ち着いていくという見解もありますが、
中国の住宅需要は未だ落ちる気配はありません。

中国での住宅需要が落ち着かない限り、木材の高騰は中々収まらないかもしれません。

国産木材で対応はできないのか?

さて、ここで一つ疑問が湧いてきませんか?

世界中で木材の需要が高まることで価格が高騰しているのであれば、
国産木材をもっと使うことはできないのでしょうか?

日本は、国土の70%近くを森林で占めている国です。
これだけ豊富な森林があるのですから、もっと国産材を使えば良いのに、と思いますよね。

しかしながら、今現在、国産木材で代用することは容易ではありません。なぜか?
それは、下記二点をクリアする必要があるからです。

・必要な人材を確保する
日本の林業の従事する就業者は、高齢化が進んでおり人手が足りていません。国産木材をより多く使用するためには、林業に携わる方が増えなければ難しいでしょう。

・施設や機器を増設する必要がある
多くの国産木材を製材し(建築用の材料として加工すること)、運搬できるようにするためには、専用の工場や機械が必要になってくるのですが、そのためには人でもお金も必要です。

以上のような課題がある訳ですが、では実際に雇用を増やすことで人手を増やし、また施設や機器を増設することは可能なのでしょうか?

これは難しい問題ですが、正直中々厳しいと言わざるを得ません。

まず、雇用や機器を増やしていくためには、国産木材が継続的に必要とされなければいけません。
人を雇って、高額な機器も購入して、さぁ今からたくさん製材するぞ!
となった頃に、輸入材の価格高騰が落ち着いて、再び国産材よりも輸入材が多く使われるようになってしまえば、元も子もないのです。

輸入材の高騰は今後何年も続くわけではないでしょう。
そうすると、人手を増やしたり、機器を購入することは、とても難しいのです。

以上のことから、輸入木材の代わりに国産木材で補うというのは、簡単にはいかない状況なのです。

世界的なコンテナ不足により、海上輸送が困難

3つ目の要因に、世界的なコンテナ不足が挙げられます。
このコンテナ不足もコロナの影響ですが、主に下記のような原因があります。

巣ごもり需要により、運搬が必要な荷物が増えている
航空便の減少により、空輸で運べる荷物が減少することで、海上輸送を圧迫
・ロックダウンしている国などは、コンテナ作業員が仕事をすることができないため、コンテナの流通量が減少

このコンテナ不足による全体的な流通量の減少から、より価格が高騰しているという背景もあります。

ウッドショックによる日本の住宅への影響

ウッドショックとはどういったものなのか、どういった理由で起きているのか。
何となくでも理解していただけたでしょうか?

原因はともかくとしても、皆さんが一番気になるのは、
ウッドショックが家づくりや価格にどう影響していくのか、という点かと思います。

そこで本章では、ウッドショックによる日本の住宅への影響について解説していきます。

価格について

真っ先に気になるのは、やはり価格についてでしょう。

結論から先に申し上げると、住宅の価格は、今後しばらく上昇していくかと思われます。

それはなぜでしょうか?

実は、4月から5月中旬頃までは、どのメーカーも販売価格はなんとかそのままにしたい…
という思いで、利益を減らしたり、業務をより効率化したり、必死に頑張っていました。

しかし、当初の予想よりも木材価格はずっと高騰しており、
もはや企業努力だけではどうにもならない状況にまで迫ってきました。

ちなみに、家を一棟建てるとき、
木材の価格が全体に占める割合をご存知でしょうか?

平屋か2階建てか、また、内装や外装に木材を使っているかによっても変わってきますが、
通常の木造住宅で大体1割前後が木材の価格(材料費)になっています。

仮に3000万円の住宅を購入しようとしていた場合は、
その一割の300万円程度が木材の材料費になるということですね。

しかし現在、この木材の価格が通常の価格の1.5倍、更には2倍近くとどんどん膨れ上がっています。

今までの価格を維持していたら会社は到底周りませんし、社員の給料を払うこともできなくなるでしょう。

そのような状況下、6月から大手メーカーを含めて価格を上げる会社が増えてきています。
このまま木材の価格が上がっていけば、価格はまだまだ上昇していくかもしれません。

納期について

ウッドショックの影響は、価格だけではありません。納期にも影響が出ています。

世界中が木材を欲していること、そしてコンテナ不足の問題もあり、
日本に入ってくる輸入木材には限りがあります。
その限りある木材を色々な住宅メーカー、工務店で取り合っている状況なので、しばらくは工事の遅れや、すぐには着工できない等の問題が出てくるでしょう。

私が所属する会社でも、プレカット屋さんから棟数制限をさせて欲しいとの連絡がありました。
6月は10棟まで、7月は8棟まで、8月は7棟まで…というように、月によって建てられる数に制限がある状態です。

新しいプレカット屋さんを探すなどの対策をとってはいますが、
この状況はどこも一緒なので簡単にはいかないでしょう。

中には、木材の供給が追いつかず、上棟できない会社もあります。
それぐらい、危機的状況に直面しているのです。

今後は、品不足への危機感から更に価格が上昇していく可能性もあります。

契約について

このような状況ですから、工事請負契約書の内容に特記事項を設ける会社も増えてきています。
特記事項とは、特別に注目すべき内容や伝えるべき内容を記載する事項のことを言います。

コロナ禍において、特記事項としてよく見かけるのは下記の二点です。

①仕入れ木材の価格上昇に合わせて、請負金額を変更する
②部材の納期の遅れがあった場合、工事の遅延に了承する

ここは非常に重要な内容ですので、契約内容に特記事項がある場合はよく確認をしておきましょう。

まず①についてですが、今は2,3ヶ月先の木材の価格が読めない状況です。
通常の価格と比べ、5月は1.4倍、6月は1.8倍、7月以降はもっと…という形で価格は上がっていますが、
今後どれぐらい金額が上がっていくのか、確実なことはわかりません。

②についても、いまは棟数制限があったり、そもそも木材が手に入らなかったりと、しばらくは納期が確実には保証されない状況がつづく続くかと思われます。
そうした場合に、工事の遅延に了承する旨を記載している場合があります。

こうした止むを得ない状況ではあるのですが、内容が不明確な書き方がされている場合は、注意が必要です。

例えば、価格上昇に合わせて、請負金額を変更とだけ記載されている場合。
どの時点で価格の確定ができるのか(着工前が望ましい
・着工前にとんでもない価格のアップがあった場合、キャンセルできるのか
など、どういう変更に対して、どういった対策がとられているのかをよく確認しておきましょう。

何故こういった言い方をするのかというと、
場合によっては、住宅メーカーや工務店に有利になるような特記事項が記載されている場合があるからです。

特に、曖昧にかかれている場合はメーカー側に都合よく解釈されるケースも考えられるので、双方が納得のいく内容になるよう、メーカーや工務店とよく話し合い、請負契約書にその内容を記載してもらいましょう。

ちなみに、話し合い、合意した内容が、ちゃんと契約書に記載されているかも重要です。
絶対に、口約束だけで終わらないように!!

住宅メーカー、工務店によって影響の大きさに違いがある?

ウッドショックの影響を大きく受けているのは、輸入木材です。
つまり、輸入木材を多く使っているメーカー、工務店ほど、今回のウッドショックの影響が大きいです。

ではどういった住宅メーカーや工務店が、輸入木材を多く使用しているのでしょうか?
それは、ローコストに力を入れている住宅メーカーや、建売住宅のメーカーです。

こういった低価格を売りにしている住宅メーカーは、今回のウッドショックの影響を強く受けています。

一方、主に国産材を使用している住宅メーカーは、輸入木材を使用している住宅メーカーと比べると、まだそこまで影響は大きくありません。
しかし、輸入木材の高騰を受け、国産木材を欲しがる会社も増えていますので、国産材の価格も上昇していくでしょう。

まとめ

今回はウッドショックについて解説していきました。
このウッドショックは、私も過去経験のないできことで、一筋縄ではいかないなと感じております。

続報や、追加の情報があれば追記していきますので、よろしければまた覗きに来てくださいね。
以上、LIDOMAでした。