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LIDOMA -建築士が作る間取りの教科書-

木造住宅の寿命30年は嘘!?住宅の本当の寿命を読み解いてみる

住宅の寿命を調べてみると、いろいろな説がありますよね。

なぜこんなにもバラバラな説があるのかというと、法律上の年数だったり、部材の耐用年数だったり、捉え方で耐用年数が変わってしまうからです。

でも色々な捉え方があると、じゃあ結局のところ、どれぐらい持つの?という疑問が湧いてきます。

そこで本記事では、木造住宅の本当の寿命について詳しくみていきます。

法的な寿命と物理的な寿命の違い

木造住宅の寿命は、法的な耐用年数と、物理的な耐用年数に分けられます。

え??どういうこと??って感じですよね。

実は、法的な耐用年数のことを法定耐用年数といいます。これはどういうことかというと、財務上の取り決めになるのです。

法的な住宅の寿命

減価償却という言葉はご存知でしょうか?

減価償却とは、「固定資産の取得にかかった費用の全額をその年の費用とせず、耐用年数に応じて配分しその期に相当する金額を費用に計上する時に使う勘定科目」のことを言います。

そして、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」という法律にて、構造や用途によって建物の耐用年数が決められているのです。

む、難しい…!

家という資産は、時間が経つにつれてその価値が減少していく、というのはイメージできますよね。家に限らず、モノは時間とともにどうしても劣化していきます。

そうした中で、家という不動産価値を算出するために、国が設定した耐用年数のことを、法定耐用年数というのです。

この法定耐用年数は、構造や用途によって変わってくるのですが、ではどういった場合に気にする必要があるのでしょうか?

実は、家を売却する際の資産価値を算出する際に、この法定耐用年数が基準になるのです。木造住宅の場合、法定耐用年数は22年になります。どれだけ良い材料で作っても、逆に安価な材料で作ったとしても、法定耐用年数は変わりません。

ここであまり具体的な解説をすると話がそれてしまいますので避けますが、要するに、法定耐用年数というものは売却時の価格を決める基準であって、家自体の寿命の話ではない、と覚えてもらえれば大丈夫です。

物理的な住宅の寿命

では、物理的な耐用年数とは、どういったものになるのでしょうか。

物理的耐用年数とは、建物そのものが劣化して使用できなくなるまでの年数を言います。雨漏りがもう治らなかったり、構造材が傷んでこれ以上住むには厳しい状態だったり…

そういった、これ以上住み続けることができない状態が、物理的な住宅の寿命となるわけです。

木造住宅の寿命が30年という、その根拠は怪しい!?

木造住宅の寿命は22年という説は、法定耐用年数だったということがわかりましたが、よく「木造住宅の耐用年数は30年」という説をみかけます。

しかし、その根拠はどこから来るのでしょうか?私自身、根拠までをちゃんと調べたことは無かったので、今回改めて調べてみることにしました。

いろいろな記事や資料を確認したところ、多くの方が住宅の寿命は30年という根拠として挙げているのは、取り壊しまでの年数のようです。

しかし、その取り壊しまでの年数がどのデータからのきているのかについて調べているサイトは、ごくわずか。

実は、国土交通省が「滅失住宅の平均築後経過年数の国際比較」という統計調査を行っておりまして、調査期間である1998年~2003年までの5年間に取り壊された住宅の平均築年数をまとめた資料の中で、日本の住宅が取り壊されるまでの期間は約30年だといっている訳ですね。

ただ、この調査の結果、日本の住宅の寿命は30年だ!というのは、ちょっと無理やりではないでしょうか?

だって、取り壊されたからといって、それが必ずしも寿命がきたからとは限らないですよね。住み手がいなくなったり、家庭環境が変わったり、取り壊す理由は様々です。

それに仮に寿命がきたとしても、そもそも1998年~2003年の時点で築年数が30年程度になる住宅って、今の住宅とかなり仕様が違うんですよね。

当時は地盤調査も行われておりませんし、基礎も今では主流になっているベタ基礎ではなく、布基礎で作られているでしょう。

更には、この調査に当てはまる住宅の殆どは、旧耐震の時代の住宅になります。

つまり、昨今作られている日本の住宅とは質がかなり違ってきているので、あまり比較対象にはならないのです。

これはどういうことかというと、木造住宅の耐用年数は30年という説はあまり当てにならないということです。

日本の住宅の寿命が短い理由

住宅の寿命を考える上で、先程の資料だけでは判断できないことは分かりました。

しかし、日本は他の国と比べて住宅の寿命が短いことは確かです。それはどういった理由があるのでしょうか?

新築志向が強い

「もし住宅を購入するとしたら、新築と中古、どちらが良いですか?」という聞くと、ほとんどの方が新築が良いと答えると思います。実は、他の国と比べて、日本は特に新築志向が強いのです。

  • 間取りやデザインを自由に選ぶことができる
  • 全て新品で気持ちがいい
  • 中古住宅は、耐震性や断熱性が不安

など、新築住宅を選ぶメリットは、確かに多いですもんね。

ヨーロッパなどの趣のある中古であればかっこいい!という印象が湧くかもしれませんが、日本の住宅市場において、中古住宅と聞くと、あまりいいイメージが無いというのもあるかも…

でも、昨今ではマンションリノベが流行っており、デザインが上手な会社が作るリノベ住宅は本当にかっこよくて住みやすそう。

仕様やニーズの変化

日本は、ここ30年~40年で劇的に生活スタイルが変化してきています。

生活様式はもちろん、空調などの設備も進化が目まぐるしいですし、ドアやサッシ(窓)の性能も劇的に良くなっています。

また、住まいに対するニーズの変化も大きいでしょう。20年ほど前まではいかにプライバシーを充実させるかが求められていた住宅は、最近ではいかに家族とコミュニケーションをとれるかが重要になってきています。

そうした設備の仕様や生活スタイルの変化に付いていくには、中古住宅よりも新築住宅の方が対応しやすかったんですね。

長持ちさせる時代へ移行している

今までは「つくっては壊す」ことが多かった日本の住宅市場ですが、これからはいかに長く使うかが重要になってきます。

世界的に注目されているSDGsの目標達成も目指す必要がありますし、人口・世帯数ともに減少していくことから、より少子高齢化社会へと移り変わっていくこともあります。

限りある資本・資源をいかに長く使っていくかが、今後の住宅市場では重要になってくるのです。

結局、住宅の寿命は何年?

では結局のところ、住宅の寿命は何年になるのでしょうか?この問に対する答えは、どうメンテナンスをしていくかで大きく変わってきます。

というのも、住宅というのは、屋根・外壁・内壁・設備と、それぞれの部位で耐用年数が異なってくるのです。逆に言えば、これらの部位ときちんとメンテナンスしてあげれば、住宅の寿命は劇的に長くなるのです。

でも何かしらの指標がないと分かりにくいですよね。そこで、いくつか事例を元に考えてみましょう。

全くメンテナンスしない場合…寿命20~30年

家を購入してから全くメンテナンスをしない場合、一番最初にガタがくるのは設備周りと建具周りでしょう。

水回りの排水漏れがあったり、お湯がでなくなったり…あるいは、扉が開かなくなったり、外れてしまったり…

20年を目安に設備機器や建具周りを一新すれば、住宅はまだまだ長持ちします。

設備周りはメンテナンスした場合…寿命30~40年

設備周りをしっかりメンテナンスしてあげると、次にガタがくるのは外壁です。

多くの木造住宅にはサイディングという材料が使われているのですが、このサイディングは年数が経つとコーティングが剥がれてきます。

コーティングがはがれてしまうと風化しやすくなり、ひび割れや水漏れが起こってしまうのです。

サイディングの後ろには通気層と下地があるので、サイディングがひび割れたからと言ってすぐに家に雨水が侵入するわけではないのですが、早めに対処しないとどんどん下地が腐ってしまい、取り返しのつかないことになります。

しかし外壁についても、定期的な塗替え、そして30~40年を目安に張替えを行うことで、住宅はまだまだ長持ちします。

屋根材についても同様です。多くの木造住宅の屋根は、化粧スレートか鋼板が使われています。こうした部材を定期的にメンテナンスすることで、まだまだ長持ちさせることができます。

各部材をちゃんとメンテナンスした場合…60年以上

それでは、設備周りもしっかりとメンテナンスを行い、外壁や屋根についても定期的にメンテナンスを行った住宅は、どれぐらいの寿命になるのでしょうか。

現代の住宅で、しっかりとしたメンテナンスを行っていれば、概ね60年以上はもつでしょう。

実際、国が制定した仕様で長期優良住宅という制度があり、こちらの認定を受けた住宅は100年もの寿命をうたっています。本当に100年もの年月に耐えられるのかはわかりませんが、それでも60年はゆうに超えるでしょう。

それぐらい、メンテナンス次第で住宅の寿命はぐっと変わってくるのです。(もちろん、メンテナンスしやすい家を作ることも重要です)

最後に

以上、本記事では住宅の寿命について考察していきました。

木造住宅の寿命は30年と言われると、えっそんなに短いの!?とびっくりすると思いますが、こうして現状を読み解いていくと全然そんなことはないんですね。

とはいっても、全くメンテナンスをしなければ寿命は急激に短くなります。お気に入りの我が家を、ぜひ大事にしてくださいね。以上、LIDOMAでした。